ようやく物件を決めて手続きをしている最中に、やむをえず賃貸の申し込みをキャンセルしたくなることがあるかもしれません。例えば、急な転勤や病気になったり、経済状況が変わったり、他によい物件が見つかったりなど、人によって理由は様々でしょう。
契約の段階によっては、キャンセルすることで違約金が発生することもあります。まずは自分が今どういう段階なのか知っておく必要があります。入居不動産会社によっては、賃貸の申込時に申込金を支払っている方もいらっしゃるかと思いますが、これをちゃんと返金してもらえるかも気になるポイントですよね。
今回はそんな賃貸の申し込みキャンセルに関する気になる疑問についてまとめてみました。
入居申込〜入居審査が出るまでの流れと注意点
①入居申込書と申込金について
住みたい物件が決まったら、「入居申込書」の記入をします。そこに書かれた個人情報を元に、大家さん(貸主)は入居審査を行います。結果は一般的には早くて数日〜1週間くらいで判明します。「入居申込書」の提出時か、あるいは入居審査中に申込金と呼ばれるお金を預けることがあります。仲介業者から重要事項説明を受ける前であれば、あくまで契約前の物件を仮押さえする名目のお金ですから、法律上は、もし本契約前にキャンセルすることになっても、返還されると定められています。しかし、不動産会社によっては、物件による独自の取り決めがあり、「申込金はお返しできません」というところもあります。非常にトラブルになりやすいので、あらかじめ申込金を支払う際に「本契約までの間、一時的に預けるだけの費用であること」と「いつまでが預かり期間なのか」を確認し、「預かり証」を発行してもらいましょう。また、この「預かり証」は大切に保管しておくことをおすすめします。
②「預かり証」とはどんなもの?
現金を一時的に預かる場合に用いられる書類で、領収書のような形式であることが多いです。受け取る際は、次のような事項が書かれているかをチェックしましょう。
1. お金の授受の目的と理由
預かる理由として、物件の優先順位を明確にするためなどが書かれていることを確認しましょう。「手付金としてお預りしました」と書かれている場合はキャンセル時に返金に応じてもらえない可能性があります。契約が成立していない時点で受領する金銭は「預かり金」と記載するのが一般的です。
2. その物件の契約書にサインしないときは返還される旨
3. いつ返還されるのかという日付と、返還の方法
キャンセル無く、本契約に進んだ場合、申込金は返還されずにそのまま手付金として扱われるケースが一般的です。どのタイミングで契約が成立したと見なされ、預かり金が手付金としての扱いになるのかは不動産会社によって異なるので、不安な場合は確認しておくとよいでしょう。
4. お金を預けた日付
5. お金の受取人の署名と捺印
たいていの不動産会社の場合、お金を預かる際には自主的に発行してくれるかと思いますが、万が一、発行を拒否されるようなことがあれば、その会社での契約は辞めた方が無難でしょう。
③先に重要事項説明を受けている場合は要注意
お金を支払う際に、物件についての重要な事柄について説明され、その内容に同意した上で入居審査を受けた場合は、まだ正式な契約書に印鑑を押していなくても「借りる意思があり、契約の意思を表示した」と判断され、キャンセル時にお金が戻ってこないケースもあります。営業マンによっては、「後でキャンセルも出来るので、とりあえず決めていまいましょう」と申し込みを急かす人もいるかもしれませんが、こういったタイプの営業マンは信頼しない方がよいでしょう。
どんなに勧められても、「まだ今の物件に決めかねている」「他ももう少し見てみたい」という場合は、安易に入居審査を受けないようにしましょう。
複数の不動産会社で同時に入居申し込みするのはマナー違反
入居申し込みをした後にキャンセルすることは可能ですが、よほどの事情が無い限りは避けた方がよいでしょう。良心的な不動産会社だと、入居申し込みがあった時点で、他に入居希望が出ないように入居者募集の広告を取り下げて、優先的に契約が決まるようにバックアップしてくれているところもあります。「あの物件もこの物件も気になるから一応押さえておいてもらおう」と、例えば不動産会社Aと不動産会社Bで、それぞれ別の物件に同時に入居申し込みをし、「後でキャンセルすればよい」という安易な考え方は不動産会社や大家さんをはじめ、色々な方に迷惑がかかるのでやめましょう。
また、キャンセルした履歴が、物件の管理会社に残ることがあります。もしも次に見つけた物件がキャンセルした物件の同じ管理会社や大家さんのものだった場合、審査が不利になる可能性があることは覚悟しておきましょう。
まとめ
入居申し込みをした後でも、重要事項説明を受け、契約書に印鑑を押すまでは、基本的にキャンセルはできると思ってよいでしょう。ただし、マナーやリスクを理解して、やむを得ない場合を除き、出来るだけ入居申し込みをする前によく検討するようにしましょう。なお、やむを得ない事情でキャンセルする場合は、一刻でも早い連絡を心がけましょう。